鍼灸を受ける前に

鍼灸は何をしているのか

鍼灸は患者の病態の変動を観察することが根本です。
その中で得た情報から「虚」「実」に対して診断即治療をおこなうことが原則であり鍼灸の本道です。
2000年以上も前から中国に伝えられた最古の古典「素問」にも、身体の調和が崩れると病気になると紹介されていますが、起きている現象(標)を和らげ、その現象のもとにある体調の異和(本)を整えることが鍼灸本来の目的です。
このように身体全体のバランスを良くすることによって新しい病気は短期間で治すことは容易です。しかし拗らせた症状は施術を長く続けなければ効かないものです。悪性のもの、古い病気でも比較的にすぐ良くなることはありますが、一般に鍼灸や漢方というものは5年間の病には5年をかけるという心構えで、鍼灸師もされる方も根気よくやっていかないと治らないものです。

参考書籍
岡部素道「鍼灸治療の真髄 経絡治療五十年」|績文堂刊 1983

鍼灸の概要

鍼灸は中国伝来の古い理学療法です。
日本の医学は西洋医学一辺倒であるため鍼灸や漢方を民間療法として蔑視する傾向にあります。
しかし、実際には東洋医学における鍼灸の施術対象は、西洋医学により改善しない全てに及びます(運動器疾患から神経系、消化器系、循環器系、免疫系、代謝系、リンパ系、呼吸器系、五感の症状、ストレスなどのメンタルヘルス、不定愁訴など)。
鍼灸は様々な症状の改善に適しており、人のもつ自然治癒力を引き出しながら病気を治し、体質に変化を与えることに優れています。
効果は体質や病勢によりさまざまですが、鍼灸を受けることで今よりも快適な生活を送ることできるでしょう。
これを機にぜひ鍼灸を選んでいただけたらと思います。

参考書籍
間中喜雄「針灸の理論と考え方」|創元医学新書 1971

鍼と灸の意義

鍼施術は一定の方式により「鍼」を用いて体表より接触、穿刺し、機械的刺激を生体に及ぼし一定の生体反応を起こして、生体の示す変調を矯正し、また疾病治癒に寄与する方法であって、保健、疾病予防、治療に広く応用する施術である(定義)。
灸施術は一定の方式により「もぐさ」またはこれに類する物質を用いて、燃焼し体表より温熱的刺激を生体に及ぼし、一定の生体反応を起こして、生体の示す変調を矯正し、また疾病治癒に寄与する方法であって、保健、疾病予防、治療に広く応用する施術である(定義)。

参考書籍
芹沢勝助「鍼灸の科学 理論篇」|医歯薬出版株式会社 1959

鍼灸施術の要件

鍼灸施術は鍼と灸を使って体表に刺激を加える治療法であり以下の3つが要件になります。
(1)どこに刺激を加えるか
(2)どんな刺激を加えるか:刺激の質
(3)どの程度刺激するか:刺激量

鍼と灸の施術は患者の体質や病証といった情報を元に目的を定め、ツボを選択し、鍼法(ざん鍼、圓鍼、てい鍼、鋒鍼、ひ鍼、圓利鍼、長鍼、大鍼、挫刺鍼、火鍼、打鍼)と灸法(有痕灸として透熱灸、無痕灸として知熱灸、隔物灸、棒灸、竹の輪灸、灸頭鍼)の刺激量(置鍼時間、鍼長、直径、材質)を組み合わせておこなうものです。
当院の鍼治療は、国産の使い捨てステンレス鍼(直径0.16mm×長さ40mm)を使用して管鍼法による単刺術・雀啄術・置鍼術をおこない、灸施術は、紫雲膏灸、棒灸、灸頭鍼をおこないます。これらは体質、症状、発症からの時間経過に合わせて刺激量を調整します。

参考書籍
間中喜雄「鍼灸臨床医典」|医道の日本 1970
東京九鍼研究会「九鍼実技解説」|緑書房 2012

さまざまな視点をもつこと

私は決して出鱈目に鍼灸をおこなっているわけではありません。
一定の臨床的法則をもって目的や目標に向くように施術をおこないます。
それは「垂直的思考」(機械的情報処理)と「水平的思考」(生物学的情報処理)を併せたものです。

私がおこなう長野式治療は長野潔先生(1925年~2001年)が伝統鍼灸だけでなく先達の多くの書物を渉猟し、西洋医学の理論・知見を研究、検証して30万人以上の患者の身体を通して創りあげた「即効性」「再現性」「多様性」に優れた完成度の高い治療体系を基本として、さらに恩師から学んだ中華伝統医学、董氏針灸学を臨床応用としておこないます。

参考書籍
長野潔「鍼灸臨床 わが30年の軌跡」|医道の日本社 1993
長野康司「よくわかる長野式治療」|医道の日本社 2015
間中善雄「針灸の理論と考え方」|創元医学新書 1971

治療頻度・目安

鍼灸治療は西洋医学のように受けるものではありません。
症状が重たい場合、慢性化したものは回復までに時間がかかります。
そういった場合には短期間に集中して鍼灸治療を受けられることをお勧めします。
病気に対する治療は毎日受けても良く、1週間に1回、1週間に2回でも3回でも良いです。
健康管理の方は1週間に1回、2週間に1回、1か月に1回でも構いません。
1回の鍼灸治療で大きな変化は起こらないため、病気を治すことを目的にしている場合には集中して施術を受けてください。
それが近道です。

治癒・改善にかかる時間は、症状の程度、加齢、喫煙や飲酒、事故・既往歴・投薬における体へのダメージ、出産・流産・堕胎、不妊治療によるホルモン療法、栄養、運動、睡眠、思考パターンなどの影響により人それぞれ異なります。

また鍼灸治療はあなたの体の状態に合わせておこないます。
感覚的に刺激が足らないからといって100%でおこなえば刺激過多になります。
ご自身の治癒力が高ければ少しの刺激でも足りますから、悪化した、変化しないということはありません。
治癒力があればその場で変化しますし、治癒力がなければ1週間後、3,4日後に変化が現れます。
気づいていなくても過度に疲労が蓄積していれば2,3日気だるさが続きます。

病気や怪我に対する鍼灸治療は(病名有り)は日を空けず、慢性的なもの・原因不明なもの(病名無し・自律神経失調症・糖尿病など)は定期的に週に1回、2週に1回は受療してください。このことが鍼灸を受ける前のあなたにできる私からの提案です。

はり温灸治療院カラダノミカタ
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